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Vol.6 岡島直樹

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際コーポレーション(以下「際」)の接客・サービスにこの人アリ。丸ビルにある「カサブランカシルク」の支配人・岡島直樹さんは、今年の9月で還暦を迎え飲食業界に携わって41年になるサービスのプロです。その洗練された立ち振る舞いと豊富な知識で、接客されたお客様はたちまち岡島さんのファンになるそう。今回はそんな岡島さんの魅力に迫りました。

カサブランカシルク
支配人 岡島直樹(59才)
高校卒業後、ホテルオークラに1年務めた後、フランスやイタリアに留学。その後ワインアドバイザーやソムリエの資格を取得。飲食店のコンサルティング会社にて多くの飲食店の立ち上げると同時に、当時のワインブームに乗ってワインセミナーを全国で開催。自身のお店も10店舗以上経営した経験を持つ。「際」に2006年入社。さまざまな飲食業態の支配人歴任後、2016年7月からは丸ビルにあるカサブランカシルクの支配人を務める。




 

Q1.今から40年前の20才の頃に、フランスやイタリアへ留学されたとか?

高校を卒業してホテルオークラで1年ほどフランス料理の見習いを経験後、フランスに2年半、そのままイタリアに2年間、料理人として修業に行きました。意外に思われるかもしれませんが、40年前のパリは、ちょうど「ヒロタ」のシュークリームや「とらや」の羊羹が開店したばかりで、日本人がパリで働くことはそんなに珍しいことではありませんでした。私が勤めたフランス料理屋も今の「KIHACHI」の創始者熊谷喜八氏がスーシェフでしたし、ホールでは、現在国際ソムリエ協会会長の田崎真也氏がソムリエの資格を勉強しながら働いており、とても刺激的な毎日でした。その後、パリから休暇のたびに遊びに行っていたイタリアへ行くことに。イタリアは、とにかく人が陽気で親切。さらにイタリア料理は、素材を生かしたシンプルな味付けが肌に合っていたので、イタリア料理の料理人に迷わず転身しました。私が行ったのはイタリアの地図でいうとかかとの部分にあたるプーリア州。当時アジア人は一人もいない田舎町で、いつも夜になると銃撃戦の音が聞こえるような危険な一面もありましたが、料理を学ぶのはもちろんイタリアで生活するのが楽しくて仕方なかったです。またフランスやイタリアのラテン系の人たちは、いかに他人を喜ばせるかをいつも考えている思考の持ち主。今思うと私のサービスの原点であり、美味しいワインと出会えたことと同じくらい海外留学の大きな収穫でした。

Q2.接客・サービスするにあたって、心掛けていることはありますか?

お客様がその日の夜に「今日のお店は雰囲気のよいところだった」「お酒と料理おいしかった」と余韻に残るようなお店でありたいですね。ただし、その際接客した私の顔を思い出すようでは、サービスの人間として失格だと思っています。私たちは、お客様にとって黒子のような存在であるべきだからです。主役はあくまでお客様であり、お客様が感謝すべき相手は、たとえば接待やデートなら、そのお客様を連れてきたホストの方ですよね。合わせてサービス側は、お店から店舗の営業利益を少しでも増やすことも求められます。お客様にお店のファンになってもらい、1品でも多くの料理を注文してもらうには、自分の中から湧いてくるエネルギーや情熱で動く事が、どんなに高度な接客マニュアルより効果的です。

Q3.お客様が望むサービス提供するには、どうすればいいでしょうか?

失礼にあたらないように注意しながら、今日は誰が主役で、どのような目的なのかなど、お客様の服装や振る舞いをよく観察することです。あとは、直接コミュニケーションをとって好きなものを探ります。こればかりは、経験をたくさん積むしかないのですが、お客様の好みの方向性がわかる指標があります。例えばコースの最後の飲み物をお伺いして、コーヒーを選んだ人が食中のワインに悩んでいらっしゃったら、味は重めだけど葡萄の熟成期間が短めのメルローやカベルネ、サンジョベーゼを提案します。紅茶の人には、酸が多めのブルゴーニュ地方の葡萄でつくられたピノノワールやガメイ。カフェラテを好む人には、乳酸発酵が長くて重めのカベルネやボルドー、キャンティ・クラシコのあたりでしょうか。また、これとは正反対のアドバイスになってしまいますが、お客様がオーダーするものを決めつけないことも大切です。

Q4.お客様の求めているものが予想と違えば、すぐに軌道修正するということでしょうか?

それももちろんありますが、自分の持っている知識や常識だけで接客しないことです。例えばバッグを含め全身高級ブランドできめている人に、贅沢な食事やワインをすすめてしまうことはあまりしません。衣食住のうち、洋服にこだわりたい人は、食事にお金はかけない人もいらっしゃいます。そういう方は、トレンド感のあるものが好きなので、リーズナブルで誰もが知っているような有名ワインから提案するといいでしょう。また、どんなに長年お世話になっている常連のお客様でも、過去に頂いた名刺にある役職ではなく、お名前でお呼びします。いつ異動などで別の役職なるかわからないからです。さらに、お客様のすべてを覚えていることが良いサービスではないと考えています。いつもお連れしているパートナーではない方と来店されたり、たいそう酔っぱらって粗相をされた場合も、次回いらっしゃったときには「そうでしたっけ?」ととぼけてあげる適度な距離感も大切です。

Q5.最後に際のサービスについての思いをお聞かせください。

私は、料理は、お客様のテーブルに届いて初めて料理が完成すると考えています。サービスが料理をベストな状態で運ぶためには、サービス側は料理人に素材や調理方法を聞くのはもちろん、時には、お客様の反応をもとに盛り付けのアドバイスをするなど、頻繁にコミュニケーションをとるようにするといいでしょう。また最近ソムリエの資格を持った店員が増えていることはいいことなのですが、自分の知識や好みだけで接客してしまいがちです。それではお客様は満足できず、お店にとってはファンが増えません。知識だけで接客するのだけは、気を付けたいものです。
際は他の飲食企業に比べて、売り上げが良ければ、各店舗の現場にメニューや経営方針を任せてくれる自由な会社です。一方で、刻々と変化する飲食業界にて生き残るべく際の業態変更に対応できるよう、日々精進する必要があります。そのような過程を含めて楽しめるような料理人、サービスであってほしいと思いますね。



カサブランカシルク 丸ビル

東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング5F
03-5220-5612
ランチ
平日 11:00 – 15:00(L.O.14:30)
土日祝 11:00 – 16:00(L.O.15:00)
ディナー
平日・土 17:30 – 23:00(L.O.22:00)
日・祝 17:30 – 22:00(L.O.21:00)
定休:施設休業日
130席 ※カウンター6席
禁煙



 
※掲載内容は2016年8月2日現在の情報となります。