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SERIES

Vol.7 船倉卓磨



 

赤坂一ツ木通りを入った裏路地に中国料理店「月居げっきょ」があります。この店の料理長は船倉卓磨。時菜(季節ごとの食材)、伝統菜(中国に伝わる基本的料理)そして家常菜(それぞれの家庭で食する家庭)を「月居」の料理として追求し続ける日常を追いました。




「月居」料理長
船倉卓磨(38歳)
高校を卒業して中国料理店で料理人のアルバイトを経験後、21歳から「赤坂離宮」で修業を積み、26歳で際に入社。様々な料理店の厨房を経験した後、2010年から「月居 菜根譚」の料理長を務める。


 

「赤坂離宮」で料理人としてスタート

「赤坂離宮」の譚彦彬さんの元で、広東料理の修業をしていました。中国料理は厨房内で役割が細かく分かれており、「前菜」や「焼き物」を担当する人、まな板で食材を切る係の「板」、中華鍋で調理する「鍋」、小龍包などの点心を作る「点心師」などがあります。私はというと、見習いだったので「打荷だぼ」という鍋のアシスタントを務めた後は、「板」を担当していました。「赤坂離宮」では一度「鍋」についたら、一生「鍋」を務めるというシステムで、ほかの担当になることはありません。大きな店ではどこもそういう仕組みで、ひとつの分野を専門的に極められるという利点がありました。

北京を旅したことが人生の転機に

前職に在籍中、休暇をとって中国本土を旅しました。北京の町場にある大衆店の料理。これを食べたときに今まで味わったことのないすさまじいエネルギーを感じました。どこでにもある野菜や肉が力強く鍋の中で躍り、乱雑に盛られたそれらの料理は、日本では出会ったことのない力強いものでした。それから何軒も何軒も一日中、店を食べ歩きました。中国ではまた、暑いときは瓜で体を冷やし、寒いときは羊肉で体を温めるといった、季節と共に歩む「医食同源」の生活を垣間見ることができました。感動した私は帰国後しばらくして、際コーポレーションで北京料理を学ぶことに。広東料理とは180度方向性の違う北京の家庭料理や郷土料理を、言葉と一緒に一から学ぶ必要があり、最初はとても苦労しました。また、大きな店から小規模の店に移ったことで、一から十まですべて自分でこなさなければなりませんでした。大変でしたが、それがとても重要なことだと今は身をもって思います。

献立はひと月ごとのコースのみ

この店のテーマは「食在十二暦」です。日本では季節ごと、月ごとに食材が変わります。「月居」では、生産者の方々から届くもの、築地で買ってくるもので1年12か月、月ごとに献立を作っていて、コースのみの提供です。内容は日によりますが、前菜から始まって5品ほどの野菜、肉、魚の料理のあと、しめの食事と続きます。最近は鰻を出すことも増えました。鰻鍋(うなべ)をお出しするときは、壺に入れた鰻に紹興酒をかけて酔わせ、眠った鰻を調理する工程をお見せするなどのプレゼンテーションもおこなっています。食材を吟味することだけでなく、食べることへのお客様の期待感、楽しさ、驚き、感性を刺激できる時間を作れたらと思います。

滋養ある食材から力をもらう料理

旬の食材には、その季節を乗り越えるのに必要な栄養素があり、旬の時期にからだに取り入れることで、私たちは自然のエネルギーをもらいます。野菜には野菜、肉には肉、魚には魚の旨みがあり、食材が本来もつ旨みを大切にして、余計な調味料を加えず素材の力で料理をするのが「月居」の料理です。いま私が気に入っている料理は、フェンネル、香辛料をたっぷり使った骨付きの羊肉と根菜のスープなのですが、羊を大鍋でぐつぐつ煮て、味つけはシンプルな塩味です。いい食材を見つけることは本当に重要で、私も年に一度は中国本土に出向き、食材の調達をしたいと思っています。毎日通う築地は、私にとって一生の学校です。これから少し遠くなりますが、豊洲にも通うつもりです。



菜根譚「月居」 赤坂

東京都港区赤坂5-1-30
ランチ11:30 – 15:00(L.O.14:30)
ディナー17:00 – 22:30(L.O.21:30)
定休:日・祝
62席
個室のみ喫煙可