people@KIWA

SERIES

Vol.4 常川清悟

vol_4_719_240

 

武蔵と相模の境、東京・町田市鶴川にある「武相荘」は、かの実業家・白洲次郎と作家・白洲正子が暮らした茅葺き屋根の趣のある旧白洲邸。2014年の年末に内装をリニューアルし完成したのが、際コーポレーションが運営する「レストラン&カフェ武相荘」です。自然豊かな山の上にあり、料理でお出しする山菜や筍、山椒(木の芽)、クレソン、などは敷地内にて大切に育てられたもの。また、季節替わりのランチはたとえば親子丼なら、白洲家のレシピをアレンジして、このランチのために作家に器を発注するなど、武相荘ならではのサービスでお客様をもてなします。今回は、そんな「レストラン&カフェ武相荘」のシェフ常川さんのお話です。




レストラン&カフェ武相荘
常川清悟(35才)
和食の板前の父、美容師の母の元に生まれ、小さな頃から添加物やジュース、ファストフードとは無縁の食生活を送る。19歳で今はなき青山の有名人気フレンチ店「ポアロー」などで修業を積み、27歳から銀座や湘南のカフェやレストランで料理長を務める。32歳で「際」に入社し、現在は「レストラン&カフェ武相荘」の料理長。


 

Q1.今はなき青山のフレンチの名店「ポアロー」で修業したそうですが、料理人を目指したのはいつでしょうか?

19歳の頃です。お店に弟子入りしてからは料理人になるまで、月給は7万円で、時間をねん出するために家にもほとんど帰らず、修業に明け暮れる毎日でした。夜は閉店後、オヤジ(師匠)に出された宿題のレシピを作るために居残り、事務所の椅子を並べて、仮眠をとっていました。新しい仕事を任せてもらうために、朝4時に起きてみんなが出社する8時になるまでに仕込みを全部終わらせるなんてことも。また、少しでも時間が空くと、レシピの配合計算のために苦手だった小学校の算数のドリルを解いたり、ロブションやエスコフィエなど一流料理店の本を読んだり、とにかく必死だったんです。そのかいあって、22歳にしてフレンチの最終関門である「焼き(火入れ)」以外の作業は誰よりも早く担当させてもらえました。

Q2.なぜそんな過酷な環境であるのに、休まず何年間も頑張れたのでしょうか?

「一流のシェフになる」なんてかっこいい理由ではなく、「料理人以外の道はなかった」から。実は、オヤジに毎日毎日作った料理を罵倒され殴られるうちに5年目くらいに鬱になってしまい、包丁を握られない時期がありました。それでもオヤジは包丁と私の手をガムテープでぐるぐる巻きにして「これで練習を続けろ」と容赦しません。今の子ならそこまで追い詰められたら辞めてしまうと思うのですが、「料理人になって人生のスタートラインに立つ」ということしか頭になかったので、苦しいながらも続けられました。しばらくして念願の「火入れ」も担当させてもらえることになり、料理人としての人生が少し見えた途端、鬱も改善しました。今となっては弟子を一人前にするためという当時のオヤジの気持ちもわかるし、感謝しかありません。

Q3.「武相荘」のコース料理を構成する際に、大切にしていることはなんでしょうか?

初めにお出しする料理のインパクトでお客様の心をつかむことです。そうすることで、その後にお出しする料理への期待と信頼を得られると思っています。ですから味はもちろん見た目でも楽しんもらえるよう、最初のお通しは特に大切にしています。 例えば、ソフトドリンクを頼んだ方へのお通しは「ゆばのパリソワーズ」。2層の色が楽しめるように透明のグラスでお出しします。普通パリソワーズは、すったじゃがいもとコンソメで作るのですが、うちは湯葉とコンソメを使い、下の層の出汁醤油のジュレと合わせることで味の変化を楽しめます。一方の「フォアグラのもなか」は、お酒を召し上がる人に。フォアグラのテリーヌや奈良漬け、菊芋のクリームが入っています。隠し味は鞘からしごいたバニラビーンズ。もなかにこれらを挟むことで「甘じょっぱさ」のハーモニーが生まれ、お酒がますますおいしく進むのです。

Q4.どんなに忙しくてもお客様とコミュニケーションをとる理由とは?

お客様には、食べる前に「おいしいそう」、食べて「おいしい」、その日の夜にでも「おいしかった」と3段階で評価してもらって、初めて「本当においしい料理」が完成すると考えています。そのために重要なのは、次の料理を出すタイミング、料理のプレゼンテーション、各人に合った料理のボリューム。ですからお客様と適度にコミュニケーションをとって、様子を伺うことで、料理を完成させていくのです。 武相荘では、朝一番に育てた野菜を収穫し、厳選した素材で手作りしたバターやコンソメなどの調味料を使って、新鮮な魚や肉を調理しています。ぜひ、一人でも多くの人に、豊かな自然に癒されながら、レストラン&カフェ武相荘の料理を堪能してみてほしいですね。




レストラン武相荘

東京都町田市能ヶ谷7丁目3番2号
旧白洲邸 武相荘
042-708-8633
11:00 – 20:00L.O.
定休:月曜
74席(室内36席/テラス30席/バー8席)
禁煙