people@KIWA

SERIES ALL

Vol.8 岩倉一紀

vol8_719_240

 

今回インタビューしたのは、際コーポレーション(以下、際)の制作・施工部門「キワエンジニアリング株式会社」の岩倉一紀です。同社は通称「工事部」と呼ばれ、際の全国の店舗の壁画制作やエイジング塗装など、和洋中数ある店づくりに欠かせない仕事を担っています。岩倉は、会社設立から5年後の1995年に入社以来、際の「顔」を作り続けてきました。今では外部からの依頼も多く、直近では京都の「本家西尾八ツ橋」の看板を手掛けるなど、全国を飛び回っています。



岩倉一紀

キワエンジニアリング株式会社
岩倉一紀(44歳)
1995年、際コーポレーションに入社。料理人やマネージャーを歴任したのち「工事部」へ異動。際発祥の地である福生で『DEMODE HEAVEN』や『DEMODE DINER』『韮菜万頭』『万豚記』などの施工を手掛ける。2007年からは壁画や看板制作、エイジング塗装、家具什器制作を専門とした関連会社「キワエンジニアリング株式会社」の営業・壁画部門のリーダーを務める。


 

エイジングのプロとして多くの作品を送り出す

際コーポレーションの店づくりといえば、特徴的なのが「エイジング※」と呼ばれる塗装の技術です。最近では店舗以外にホテルや旅館などの施工もあるので、エイジング塗装ばかりしているわけではないですが、創業当時は数多く手がけました。20年前の当時は、左官屋などの職人さん達は、ピシッと綺麗に仕上げることが正解と考える人が当たり前の世界。ですから、社長が求める「北京の街角にあるような古びた中華屋さん」を再現するとなると、自分たちでやるしかなかったのです。おかげで、キワエンジニアリングのエイジング塗装の歴史は長く、多くの手法を身に着けることができました。現在では新しい家具をアンティーク風に仕上げることが、一時的な流行ではなくインテリアの一つとして定着したということもあり、外部のお客様からも注文をいただいております。

一から作り上げた伝説の店、広尾「胡同四合坊」

いちばん印象に残っている現場は、今はなき広尾の胡同四合坊(フートンスーフォーファン)です。今から20年くらい前に現在の広尾高校の近くにある4棟のつらなる古い家を10年間の契約で借りて、中華料理屋に改装したんです。このお店は外に北京ダックを吊るすような大衆的な中華料理屋である一方、音楽界などの著名な文化人が常連客として通うような、モダンでアーティスティックな一面も持つお店でした。与えられた工事期間はたったの1カ月。工事部の10人で、内装だけでなくファサードや外構まで、ガス・水道・電気以外のすべての工事を行いました。朝8時から夜11時まで全力で力仕事をした後、居酒屋で飲んだら、工事現場に戻って寝袋で雑魚寝してまた朝から働く日々。休みは文字通り1日もありませんでしたが、毎日みんなで創り上げることが楽しくて仕方ありませんでした。契約が終わるまで繁盛したこのお店に、立ち上げから関われたことは誇りであり、私の原点でもあります。「あれ以上大変な工事はない」と思うと、普段の徹夜の作業も苦にはなりません。

独自の世界観を表現する者として

「際」は、時代の変化に柔軟に対応しながらも独自の世界観を作り上げてきました。これからどんなに規模が大きい会社になろうとも、「際」の工事部としての表現者であることを念頭に置いて、既製品にはない、他社には作れない唯一無二の作品を目指しています。そのためにも、仕事の仕上がりに「これくらいでいいかと妥協する」「時間になったから仕事は終わり」ということはありえません。どんなに時間をかけて丁寧に作ったものでも、結果によっては潔く諦めて一から作り直すくらいの心意気が必要です。
例えば、5日間かけて、5人のスタッフで壁画を描き上げたとしても、施工主様が「良し」としないなら、その壁画は完成したとは言えません。どんなに悔しくとも、自分たちのアイディアの方が正しいと思っていても、相手の要望を満たせなかった自己の未熟さを受け入れること、そして早々に気持ちを切り替えて、新しい壁画に取り掛かれるようなタフな体力と精神が必要になってきます。つらい決断になろうとも、よい作品を作るためにはそれくらいの犠牲は当たり前なのです。

「際」の心を受け継ぐ

最後に忘れてはいけないのは、自分の職業や作品、会社を誇りに持ち、道具やスタッフの仲間を大切にすること。これはまだ「際」が数店舗しかなかった頃、毎日社長の横で働いて、学んだことでもあります。初心を忘れずにこれからも精進したいと思います。

※エイジング塗装とは
特殊塗装のひとつで、主には、アンティーク家具のように、長い年月が経過してついた傷や汚れ、ひび割れなどを、塗料などを使って表現する技術。例えば白い壁をヤニやホコリなどで汚れたようなペイントを施したり、木製の扉に塗料を重ね塗りしてひび割れたような風合いに仕上げます。



vol8_300_300_shop

瑞穂FACTORY

〒190-1202
東京都西多摩郡瑞穂町駒形富士山127
TEL 042-557-7967
FAX 042-557-7990



 
※掲載内容は2016年10月5日現在の情報となります。